兒玉語録3月号『バンクーバー・オリンピック キーワードは~集中力~』を掲載
2010/03/02
バンクーバーオリンピックの華とも言われ、
多くの国民の関心を集めた、女子フィギュアスケートの
浅田真央とキム・ヨナの決戦も、キム・ヨナの勝利で終わった。
二人の演技中の韓国内のテレビの視聴率は、
41.9%に達したとのこと。韓国では、
「国民の妹」として圧倒的な人気を誇り、
帰国時には常に二人のボディガードが付くが、
その一方、人気に驕らず社会貢献活動にも力を入れているそうだ。
それにしても、全国民からあれだけ期待され、
重圧を抱えていながらの完璧な演技は、
精神面が強靭であり、集中力が優れているからである。
一方、浅田選手は前半はほぼ完璧だったが、
後半に入ってからのミスは、疲れからくる集中力の欠如が
原因だろうと思う。
緊張すると筋肉が硬直し、早く疲労が来る。
疲労は集中力のスタミナを消耗させてしまうのである。
しかし浅田選手は、キム・ヨナには出来ない、
自分にしか出来ないプログラムに挑み、トリプルアクセルを
3回も成功させ、試練を乗り越えて掴んだ銀メダルだった。
私は、今回のオリンピックを「集中力」というキーワードをもって、
テレビで観戦していた。やはり、肉体的にも精神的にも、
瞬発力と持続力を鍛え抜いて、備えていないと、
世界一を争う最後の場面での「集中力」は
発揮することは出来ない・・・
と確信できた。
以前、長野オリンピックのスケート金メダリストの清水宏保さんのことを、
この「語録」でも書いたが、当時の新聞記事で清水さんは、
最高の状態で滑っている時は、自分の周りが真っ白になり、
外の音は何も聞こえてこない。
視野は30センチ位しかなく、滑るべきラインが光って見えるそうで、
「そこは抑えながら・・・とか、自分と対話しながら滑っていますね。
でも、いい滑りが出来た時ほど、記憶が飛んでいます。
悪い時は全部覚えているけれど。いい時ほど、記憶が消える。
より本能に近い滑りだからかもしれない。
何週間か経って、ふっと記憶が戻ったりすることもある」と言っていた。
記憶が飛んでしまう集中力は、さすが第一人者だと思った。
「より本能に近い滑り」が出来るというのは、
清水さんが集中した厳しいトレーニングと猛練習の積み重ねによって、
氷の上を滑ることが体の一部となって、
試合になると勝手に体が動いてくれるのだろう。
人間は、生まれつきの能力の差はほとんどない。
「努力は才能に優る」のである。
繰り返し、繰り返し努力する以外に、道はない。
朝起きて、顔を洗い、食事をする。
そういう日常の家事ややるべきことを、
いちいち考えながらする人はいないと思う。
考えながら歩く人もいない。
毎日の繰り返しの結果、手や足が勝手に動いてくれるのである。
何事もそのレベルに達するぐらいの練習が必要で、
最近は面白くない基本の繰り返し練習を避け、
一足飛びに高度な技術に挑戦したがる傾向がある。
それでは全く「集中力」は身に付かないということを知っておくべきである。
勝負の世界に生きている者の条件は、
負けた悔しさをバネに、次は勝つこと、
そして勝ちたいと思う気持ちを持ち続けること。
「あれだけいい勝負をしたのだから、まあいいや」と負けて満足するのは、
自己満足でしかない。
しかし、勝負である以上、どちらかは負けるのだから、
常に勝つというわけにはいかない。
勝負では、自分が戦う意志を持って攻めていけば、
負けたとしても明日に活かすことが出来る。
大事なことは、如何に戦ったかであり、
その如何にとは、どの位創造性をもった作戦であったかであり、
戦ったかの意味するものは、どの位気迫をもって戦ったかである。
勝負への気迫、それを支えるものは、
集中力、平常心、判断力、決断力、実行力、気力
などが大切な要素である。
夢が大きくなればなるほど、困難も大きくなる。
夢ある限り、困難は続く。
だから、困難から逃げるのではなく、
困難を楽しみながら夢に向かって羽ばたこう。
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児玉圭司名誉総監督
昭和35年~45年
明治大学体育会卓球部監督
昭和45年~令和2年
明治大学体育会卓球部総監督
令和3年~現在
明治大学体育会卓球部名誉総監督
(株)スヴェンソン 代表取締役会長
日本学生卓球連盟 名誉会長
明治大学駿台体育会 名誉会長
- 昭和31年
- 世界選手権シングルスベスト16
- 昭和40年
- 第28回世界卓球選手権 日本代表監督
- 昭和48年
- 第32回世界卓球選手権 日本代表監督
- 昭和50年
- 第33回世界卓球選手権 日本代表総監督兼監督