大きくする 標準 小さくする
  • トップ
  • 児玉語録
  • 児玉語録2月号『全日本選手権に思う』『「土台」の大きさが重要』を掲載

児玉語録

児玉語録2月号『全日本選手権に思う』『「土台」の大きさが重要』を掲載

2013/02/05

『全日本選手権に思う』
『「土台」の大きさが重要』


全日本卓球選手権大会が終った。男女共にロンドンオリンピックで活躍した
選手同志の決勝となり、卓球ファンにとっては願ってもない展開となった。
まず丹羽孝希選手おめでとう。 福原愛選手おめでとう。
 
女子の決勝戦、石川選手が2-1とリードしたところで、
福原選手は気持ちの切り換えをして思い切りのよい積極的な攻めに転じた。
心が前向きになれば、足が動くようになり、
フォア・ハンドの強打が随所に出るようになった。
一方石川選手は最後まで同じ戦法で消極的な戦い方で敗れた。
 
試合後しばらくして、会場で石川選手と偶然に顔が合ったとき、私のところへ
挨拶に来たので、「残念だったね、今回は佳純が有利だと思っていた、
予想がはずれたよ、試合中、いつ気持を入れ替え、
足を使ってフォア・ハンドの攻めを多用するのか待っていたけど、
消極的なまま終ってしまった。佳純らしくなかったね、
大きな試合に、なればなる程思い切った積極的な心が大事だよ。
このことは非常に大事なことだから、
この敗戦を糧にして世界選手権では願晴ろうな」と声を掛けた。
 
男子の決勝戦、女子と同じような展開になったのには驚いた。
水谷は昨年のリベンジに燃えていて、圧倒的な強さで、決勝まで勝ち進んだ。
そして、決勝戦でもその勢いを持続し、
「思い切って打てば、こんなボールでも入るんだ」
と思う程、凄い強打を決めていた。
 
一方の丹羽は1-3とリードされたところで、気持ちを入れ替え、
足を使ってフォア・ハンドを多用するようになった。
そのため粘りもでて、すばらしいラリーで得点するようになった。
水谷は、丹羽が思い切りのよい戦法に変わったことは、頭では感じたと思うが、
そういう時は相手以上に思い切ってやる・・・という鉄則を忘れ、勝ちを意識して、
消極的になってしまったことが敗因になってしまった。
 
私は水谷選手も丹羽選手も才能の面では、
中国選手と同等以上の持ち主だと確信している。
しかし精神面の「強さ」、「思い」、
そして訓練の「量」と「質」が明らかに劣っている。
この問題を克服さえすれば、来年の世界選手権、3年後のオリンピックで
中国に勝つことは出来ると断言できる・・・ゼロからの再出発を心から期待したい。
 
又大学生としては、女子松沢茉里奈(淑徳大)がベスト4、
男子平野友樹(明治大)ベスト8、
吉村真晴(愛工大)、森本耕平(愛工大)ベスト16と健闘した。
今後学生陣の尚一層の努力を期待したい。
先般「一般社団法人アスリート・ネットワーク」の
理事長柳本晶一氏(バレーボールアテネ・北京オリンピック代表監督)と
副理事長の朝原宣治(陸上北京オリンピック400mリレー銅メダル)と
事務局長が来社され、この組織の主旨や活動についてご説明を受けた。
 
思いを共有するトップアスリートが自主的につながり、
自らの成長の過程で得た「本物の感動」を次世代に伝え、
「生きる力」を育てていく社会的ムーブメントを興したい。
トップアスリートが有する「自信・自律・自立」をキーワードに、
「自分達が直接関与し、企画、運営する」という方針を共有して、
現役トップアスリートの支援を行うとともに、
引退後のキャリア環境を整えてあげたい・・・などと熱心に語られました。
是非、この組織の成長を多くの方々が関心を持ち、
支援して下さることを期待して止みません。
 
実はその朝原宣治氏がある新聞で次のような記事を書いていた。
 
世界のトップクラスに君臨し続けるには、人間として「土台」の大きさが重要で、
誰もが競技だけでなく人間の本質を極め、
強くするために独自の土台作りに努めている。
確かに、目に見える技術を高め、磨きをかけることは当たり前のことですが、
それもある程度までいくと限界がくる。
そこから先へ飛躍できるかどうかはやはり土台の大小、強弱にかかっている。
 
最近はジュニア選手の活躍が目立ち、シニア顔負けの記録を出す者もいる。
今の時代、トップ選手の体の動きや練習法といった情報も比較的容易に
手に入る。そのおかげで効果的な練習が可能になり、
技術を覚えた若い選手が効率よく戦い、記録が伸びているのだろう。
 
ただ、それは単に小手先の技術を弄した結果にすぎないのではないか、
選手としてのピークの先取りになってはいないか心配だ。
サプリメントを摂って栄養補給する小・中学生の選手もいると聞き、
懸念は一層強まる。
手軽に、見栄えだけを考えて突貫工事をすれば、土台はどうしても脆弱になる。
育ち盛りの時期には、近道など考えず、
とにかく土台を大きく多様に作り上げていくことだ。
単調な練習は退屈かもしれないが、その方が結局は上に大きな城が建つ。
栄養補給もサプリメントに頼るより、3度の食事をしっかりとってほしい。
 
私が五輪メダリストになれたことの恩恵だと感じているのは、
スポーツ界のみならず経済界など各界で活躍するリーダーに
お会いできることである。
皆さんに共通するのは、思いやりがあって謙虚で純粋、
人間として素晴らしい方ばかりであるということだ。
しっかりした土台を作ってこられたのだなあと感嘆する。
私もこれまでの競技人生を礎にして、いろいろな方から多くのことを学び、
人間としての土台を大きくしていきたい。
これからの人生のレーンを快く駆け抜けるために。
 
私も全く同感。スポーツのアスリートばかりでなく、人間力の向上のためにも、
企業の経営面でも参考にしたいと思う内容だった。 
朝原宣治さんありがとう。

児玉圭司名誉総監督

昭和35年~45年
明治大学体育会卓球部監督
昭和45年~令和2年
明治大学体育会卓球部総監督
令和3年~現在
明治大学体育会卓球部名誉総監督

(株)スヴェンソン 代表取締役会長

日本学生卓球連盟 名誉会長

明治大学駿台体育会 名誉会長

昭和31年
世界選手権シングルスベスト16
昭和40年
第28回世界卓球選手権 日本代表監督
昭和48年
第32回世界卓球選手権 日本代表監督
昭和50年
第33回世界卓球選手権 日本代表総監督兼監督